--- title: USB Ethernet Gadget tags: - Linux - USB - 周辺機器 excerpt: PC と USB ケーブル1本で接続できる便利な仕組みとその導入方法 --- # USB Gadget とは? コンピュータがあたかも USB デバイスであるかのように振る舞うしくみです。 # Why USB Gadget? インターネットに接続可能なPCと Brain を接続するだけで Brain からインターネットに出たり、PCと Brain で双方向に SSH したりできます。電池切れの心配もありません。 # USB コントローラの動作モードを変更する 初期状態では Brain の USB コントローラはホストとして動作するため、このままではデバイスになることができません。 コントローラの動作モードを切り替える方法には、brain-config というツールを使う方法と手動でデバイスツリーを書き換える方法があります。 ## 方法A. brain-config で変更する `brain-config` による動作モードの切り替え方法については [brain-config](/linux/brain-config) のページを参照してください。 ## 方法B. 手動で変更する 手動で変更するには、以下の手順に従ってください。 1. SDカードの第1パーティションを`/boot`にマウントします ```sh sudo mount /dev/mmcblk1p1 /boot ``` 2. 元のdtsをバックアップします `{デバイスツリー名}`の箇所は、[対応機種の表](/beginners/get-started/#対応している機種)でお使いの機種を探して、対応する「デバイスツリー名」列の文字列で置き換えてください。(例:PW-SH5→imx28-pwsh5.dtb) ```sh sudo cp /boot/{デバイスツリー名}.dtb /boot/{デバイスツリー名}.dtb.orig ``` 3. dtbファイルをテキスト形式に変換します ```sh dtc -I dtb -O dts /boot/{デバイスツリー名}.dtb > dts 2> /dev/null ``` 4. 設定を書き換えます ```sh nano dts ``` `usb@80080000`ノードの中から`dr_mode = "host"`の箇所を探し、`dr_mode = "peripheral"`に書き換えます。スペルに注意しましょう。 書き換え後は以下のようになります。 ```diff usb@80080000 { compatible = "fsl,imx28-usb\0fsl,imx27-usb"; reg = < 0x80080000 0x10000 >; interrupts = < 0x5d >; clocks = < 0x03 0x3c >; fsl,usbphy = < 0x1f >; status = "okay"; pinctrl-names = "default"; pinctrl-0 = < 0x20 >; vbus-supply = < 0x21 >; - dr_mode = "host"; + dr_mode = "peripheral"; }; ``` 書き換えたら保存してエディタを終了します。`Ctrl+O`の次に`Enter`を押して保存して、`Ctrl+X`で終了します。 5. 編集したものをバイナリ形式に変換します ```sh dtc -I dts -O dtb dts > dtb 2> /dev/null ``` ```sh sudo mv dtb /boot/{デバイスツリー名}.dtb ``` 6. SDカードの第1パーティションアンマウントします ```sh sudo umount /boot ``` 7. 再起動します ```sh sudo reboot ``` 1〜3の手順をまとめると以下のようになります。 ```sh sudo mount /dev/mmcblk1p1 /boot sudo cp /boot/{デバイスツリー名}.dtb /boot/{デバイスツリー名}.dtb.orig dtc -I dtb -O dts /boot/{デバイスツリー名}.dtb > dts 2> /dev/null ``` 5〜7の手順をまとめると以下のようになります。 ```sh dtc -I dts -O dtb dts > dtb 2> /dev/null sudo mv dtb /boot/{デバイスツリー名}.dtb sudo umount /boot sudo reboot ``` # Brain に Ethernet Gadget を喋らせる sysfs のファイル操作により Ethernet Gadget を有効化します。 Brainux バージョン 2023-07-29-024604 以降では有効化処理が起動時に自動で実行されます。もし手動で有効化したい場合は以下の手順を参照してください。 1. 以下のスクリプトを vi や nano でホームディレクトリに保存します ```sh #!/bin/sh g=/sys/kernel/config/usb_gadget/eth mkdir ${g} mkdir ${g}/functions/rndis.rn0 echo "8a:15:8b:44:3a:02" > ${g}/functions/rndis.rn0/dev_addr echo "8a:15:8b:44:3a:01" > ${g}/functions/rndis.rn0/host_addr mkdir ${g}/configs/c.1 ln -s ${g}/functions/rndis.rn0 ${g}/configs/c.1/ echo "ci_hdrc.0" > ${g}/UDC sleep 1 ifconfig usb0 up sleep 1 dhclient ``` 2. スクリプトに実行属性を付けます ここではスクリプト名を `gadget.sh` としています。1. で保存した名前に置き換えてください。 ```sh chmod +x gadget.sh ``` 3. 実行します 次回起動時からはこのスクリプトを都度実行します。 ```sh sudo ./gadget.sh ``` # PC側の対応作業 Windows / Mac / Linux すべてで利用可能です。 ## Windows 10 / 11 の設定 1. 上記「USB コントローラの動作モードを変更する」を参照して、動作モードを Peripheral に変更します 2. Windows と Brain を USB ケーブルで接続し、デバイスマネージャで認識されていることを確認します 「ほかのデバイス」グループの「RNDIS」が Brain に当たります。 3. 「RNDIS」を右クリックしてコンテキストメニューを表示し、「ドライバーの更新」を選択します 4. 「ドライバーの検索方法」ダイアログで、「コンピューターを参照してドライバを検索」を選択します 5. 「共通ハードウェアの種類」から、「ネットワーク アダプター」を選択します 6. 製造元は「Microsoft」を選び、モデルに「リモート NDIS 互換デバイス」を選択します。「次へ」を選択するとドライバのインストールが始まるので、以降は画面上の指示に従います 7. 「ネットワーク接続」からアダプターの設定を変更します - 設定から「ネットワークとインターネット」を開き、「ネットワークの詳細設定」グループにある「アダプターのオプションを変更する」を選択します (Windows 10) - 設定から「ネットワークとインターネット」を開き、「ネットワークの詳細設定」を選択し、「ネットワーク アダプター オプションの詳細」を選択します (Windows 11) 8. Windows がインターネットの接続に使用しているアダプタ(Wi-Fi / イーサネット)を選択し「プロパティ」を開きます 9. 「共有」タブから「ネットワークのほかのユーザーに、このコンピューターのインターネット接続を通しての接続を許可する」を選択し、「ホーム ネットワーク接続」プルダウンメニューで、Ethernet Gadget に対応するアダプタを選択します 10. USB ケーブルで Windows と Brain を接続し、Gadget を起動すれば、 "USB Composite Device" が認識します。この状態で Brain から Windows に `ping` などで接続できるか確認してください。